メニュー日記拍手

貴方の好きなもの

「うぉおおおおっ!」
 ショワショワと蝉の声が響く早朝から、蝉の大合唱に負けぬほどの声を上げ、真田幸村が鍛錬を行っている。
「こんな暑いのに、朝から元気だねぇ」
 それを、彼の忍である猿飛佐助が、のんびりとした様子で眺めていた。木々に囲まれた、小川の傍での鍛錬は、佐助の提案だ。屋敷の庭先で鍛錬をするよりは日陰になる上に、木々の間を吹く風は涼しい。小川も近いので熱を持った体を冷やせると、幸村の体調を考えてのことであった。
「もっと、もっとお館様のように、立派な胸筋を手に入れねば! 佐助も、そのほうが嬉しいだろう?」
 さわやかな笑みをきらめかせ、汗みずくになった幸村が言う。
「旦那が強くなってくれるのは、ありがたいけどさ。最近はちょっと、鍛錬の熱が強すぎない? あんまりがんばりすぎて、倒れないでよ」
「大丈夫だ。安心しろ、佐助。俺はそれほどヤワではない。お館様や元親殿のように、立派な胸筋になってみせるぞ!」
「ううーん。別に、あそこまでにならなくても、俺様はいいと思うんだけどねぇ」
 気の無い返事をする佐助に、幸村は鍛錬の手を止め、歩み寄った。
「俺に、気を使っておるのか」
「なんで、そうなるのさ」
 佐助が茶の入った竹筒を差し出せば、幸村は受け取り彼の横に座した。朝露に濡れた草の香りが、ほてった体に清涼を注ぐ。茶を喉に流してから、幸村は目を泳がせた。
「ああ、うむ。それは、その、そのほうが、喜ぶのではないかと……思ったのだ」
「なんで、俺様が喜ぶと思ったの?」
 もごもごと、幸村が何事かつぶやく。何事も大声ではっきりと言う幸村にしては、こんなふうになるのは珍しい。こういう態度になるときは、だいたいの会話がどんな内容であるのかを、佐助は知っていた。
「旦那ぁ?」
 人の悪い笑みを浮かべ、佐助は幸村の顔をのぞきこんだ。
「なんか、ヤラシーこと、考えてる?」
 体ごと顔を背けた幸村の、耳が赤い。にんまりとした佐助が、背後から幸村を抱きしめた。
「なんで、立派な胸筋になると、俺様が喜ぶと思ったの?」
 ねえ、とささやきながら佐助が、真っ赤な幸村の耳に舌を差し込む。ひゅ、と息を吸い込んだ幸村が、身を強張らせた。だが、逃れる様子は無い。早朝の野外で、こんなことをしているというのに。
「俺様のために、ヤラシーこと考えて、鍛錬に励んでたの?」
「ううっ」
 唸った幸村の胸元に手を差し入れ、佐助は鍛え抜かれた胸筋を細く長い指で掴んだ。弾力のある胸乳の感触を楽しみつつ、指の腹で乳首を探る。
「ちょっと、硬くなってるね」
 そよ風のようにささやけば、幸村が佐助の腕を掴んだ。
「こんな朝から、邪まなことを考えて鍛錬してたなんて。悪い子だなぁ、旦那は」
「っ、それは」
「違うんなら、はっきりと違うって言ったら?」
「うううっ」
 図星を指されれば、幸村は弱い。特に、佐助には嘘をつけない。佐助はニンマリとして、主の胸乳をさぐりつつ、うなじに唇を寄せた。
「っ、佐助」
「なぁに」
「やめろ」
「先に、ヤラシーことを考えてたのは、旦那だろ? ね。なんで、大将や鬼の旦那みたいになれば、俺様が喜ぶと思ったの?」
 問いつつも、佐助の指は止まらない。幸村の胸筋に指を沈め、尖りをもてあそぶ。
「小石みたいに、硬くなっちゃったね」
「んぅっ」
 指で挟めば、幸村が小さく震えた。抱きしめるように両手で胸乳を掴み、揉みしだく。
「佐助」
「なぁに」
 しっとりと汗に濡れた肌が、佐助の指に吸いつく。
「やめぬか」
「無理」
 ぐ、と佐助は幸村の背に股間を押し付けた。そこに硬さを感じ、幸村が息を呑む。
「旦那も、硬くなってるんじゃないの? 乳首、こんなになってんだし」
「っあ」
 両方の尖りを強く引けば、幸村が首をそらした。アゴ下に唇を寄せ、肩に軽く歯を立てながら、佐助は幸村の胸とたわむれる.
「着物越しでも、旦那のが膨らんでるの、わかるね」
 幸村は戦装束ではなく、袴姿であった。
「ふ、佐助。もう」
「先にしかけたのは、旦那だろ」
「俺はべつに、しかけてなどおらぬ」
「鍛錬の目的が、ヤラシーことだったくせに」
 ぐ、と幸村が息を詰めた。佐助に開かれ快楽を与えられた体は、若い性に従順になっていった。破廉恥と叫ぶ初心な彼が、佐助の指にかかれば猥らな花となる。佐助はその悦びに、満足げに目を細めた。一般的な積極的な行動、というものとは違っているが、幸村のほうから色っぽい話題の気配を出すというのは、かなり積極的な部類になる。それが早朝の、しかも野外で、となると、佐助に相当な刺激を与えた。
「ね、旦那」
 調子に乗って、言ってみる。
「このままじゃ、先走りで下帯、濡れちゃうよ」
「う、ううっ」
 幸村の肩越しに見下ろす股間は、しっかりと形を示していた。ここまでになれば、出さなければ苦しいだろう。
「旦那の魔羅、出したほうがいいんじゃない?」
 促す佐助を、目じりを赤くした幸村が、求めるように見た。わかっていながら、佐助は幸村の胸乳に両手を当てたままで、離そうとしない。
「ほらほら。早くしないと、汚れちゃうよ」
 クスクスと喉を鳴らし、佐助は幸村の胸乳に指を遊ばせる。外側から内側へ、持ち上げるように揉みながら、尖りを指先で転がし潰す。幸村の息が上がり、瞳が潤み、鍛錬の熱とは違うものが、幸村の体を熱くさせた。しっとりと濡れた肌を、胸筋の谷を、彼自身の汗が伝うのを、佐助は楽しんだ。
「ねぇ、旦那。汚れた下帯を脱いで、屋敷に戻る気?」
 佐助が脱がしも逃しもしないと判じ、幸村は観念した。背中に当たる佐助の下肢は硬く、布越しに熱さが伝わってくる。冷静さを欠かない声音を包む佐助の呼気が、熱っぽくなっている。
 早朝の、こんなところで――。
 そう思いつつ、幸村は自らの手で帯を解き袴をめくり、下帯を脱いだ。ぶるりと屹立した陰茎が現れ、少し濡れた先端が日の光りにきらめく。
「すごいね、旦那。もう、そんなに立派にしちゃったんだ」
「う、言うな」
「んふ。やだ」
「っは、あぅ」
 佐助が繊細な指の動きで、幸村の胸乳をまさぐる。そこで生まれた淡い疼きが、幸村の下肢に熱を凝らせる。熱に喘ぐ幸村の牡は脈打ち震え、先端から欲のしるしを溢れさせた。
「は、ぁ、佐助っ、ん、は、ぁ」
 幸村が、背後の佐助に腕を伸ばす。自分に縋ろうとする幸村の指に唇を寄せ、佐助は彼を草の上に横たえた。
「熱いね、旦那」
 熱っぽい佐助の淫靡な瞳に、幸村は息を飲んだ。手早く着物を脱ぎ捨てた佐助の、股間にそそり立つものを目にし、幸村は息を飲み唇を開いた。その味を知っていると、無意識に求める顔になった幸村に、佐助の腰が疼く。
 自分がどんな顔をしているか、自覚無いんだろうな――。
 唇を舐め、幸村の着物を脱がせながら、佐助は思った。
「っあ、んぅ、ふ」
 覆いかぶさった佐助が、開いた幸村の唇に唇を重ねる。丁寧に唇をついばみ、舌を差し込み口腔を味わう。
「ふ、んぅ、う」
 幸村の腕が佐助の背にまわされ、佐助は幸村の舌を唇で甘やかせた。
「んふぅうっ、ふ、んぅうっ」
 最初の垣根を超えてしまえば、幸村はその性格のとおりに素直になる。堪えることの苦手な体が、佐助の下でくねっている。勃ちあがった幸村の先端が、時折佐助の腹筋に擦れ、そのたびに幸村は見悶えた。
「はふっ、は、んぁ、さ、すけぇ」
 潤み、涙を滲ませた幸村の瞳に唇を寄せ、佐助は彼の胸乳に顔を埋めた。紅蓮の鬼と言われる、彼の無双の剛勇を支える胸筋の谷に舌を這わせ、汗を味わう。
「ふふ。しょっぱい」
「ッ! 佐助、その、まずは小川に。鍛錬の汗を流してから」
「なんでぇ? 俺様、旦那の汗の匂い、好きだよ」
「なっ」
「ものすごく、興奮する」
 ほら、と佐助が幸村の陰茎に、自分の牡を重ねた。ゴクリと幸村の喉仏が動き、佐助はそこに唇を寄せた。
「その顔、すっごいソソる」
 うっとりと呟いた佐助は、幸村の胸の実を口に含んだ。チュクチュクと吸いながら舌で転がし、軽く歯を立てる。
「は、はんっ、は、ぁう」
 ビクビクと震える幸村が腰を浮かせ、佐助の腰に擦りつけた。それに応えるべく、佐助も腰を揺らめかせて、幸村の牡と自分の牡を、互いの腹で擦った。
「んぅうっ、は、ぁ、さすっ、ぁ、あ」
 胸乳を吸われ、指でくすぐられて、幸村は切ない声を上げ、佐助にしがみついた。その声を聞きながら、佐助はますます猥らな奉仕に精を出す。
「ふっ、ぁ、あう、さす、ぁ、もぉ」
 幸村の絶頂が近い。それを悟り、佐助は激しく腰を擦りつけ幸村の牡を刺激しながら、両の胸乳を強く攻めた。
「んはっ、は、あぁあああっ」
 大きな目をさらに大きく丸く開いて、幸村が背をそらせて震え果てる。余韻に痙攣する腰に腕を回し、牡に指を絡めて残滓を絞った佐助は、幸村の頬に唇を寄せた。
「ねぇ、旦那」
 佐助の声が冷静さを失っている。彼の目が淫蕩に揺れている。それに気付いた幸村が、こくりと頷きソロソロと膝を立て、足を開いた。
「ありがと」
 羞恥を残しつつ、自分のために、繋がるために動いた愛おしい人に礼を言い、佐助は彼の尻を彼の蜜で塗らした指で探った。
「ふっ、んぅ」
 ひそやかな蕾に指が触れ、幸村が鼻を鳴らした。
「旦那」
 蕾に指を押し込んだ佐助が、幸村の唇を求める。佐助の首に腕を回し、幸村はよりいっそう足を広げた。
「んっ、ふ、ふぁ、あ、んぅう」
 甘やかすような口吸いと、秘孔を慈しむ指に、幸村の胸が荒く上下する。その胸に唇を移動させ、佐助は空いた手指を幸村の牡のくびれにかけ、先端を絞った。
「んはっ、はぅうっ、さす、ぁ、は」
 秘孔を探られ胸乳を吸われ、陰茎の先をこねられて、幸村が身をくねらせる。佐助の鼻腔が夏の草いきれと幸村の汗、彼の性欲の香りに満たされた。身悶える幸村の息に、鼓動に、佐助の脳が揺さ振られる。絞った幸村の蜜で秘孔を濡らし広げる佐助の舌は、幸村の胸に甘え続けた。
「はふっ、ぁ、はぁううっ、さす、さすけぇ、ぁ、もぉ」
 きわまりきれぬ快楽に涙を零し、幸村が懇願する。その頃には彼の秘孔は媚肉と化し、佐助の牡も猛りきっていた。
「旦那。いい?」
 聞かずともわかるのに、佐助は彼に許可を示されたくて、わざと問う。幸村は何度も肯首し、音の無い声で「早く」とねだった。幸村のこぼれた息を佐助は唇で拾い、彼の膝を抱え上げる。浮いた尻の谷に猛る己の欲を押しあてた佐助は、幸村の鼻先に唇を寄せ、濡れた瞳を見つめて微笑んだ。
「入るね」
「さ、すけ、ぇ、あはぁあうう」
 ゆっくりと佐助が沈み、幸村が声を震わせる。媚肉が蠢動し、佐助を奥へと導いた。
「く、は、旦那……すごく、熱い」
「ふはっ、はぁ、あう、さ、すけぇ、あぁ」
 幸村の求めるままに、自らの欲の促すままに、佐助は幸村を貪った。
「はんっ、は、はぁあうっ、ぁ、はうぁああ」
 ふりそそぐ午前の光に汗を光らせ、幸村は佐助に縋り唇を求めた。佐助はそれに応えながら、幸村の胸筋を揉み、腰を打ちつける。
「ふっ、ふんっ、んぁあ、はひっ、は、ぁう」
 幸村の声が高さを増して、くねる腰が最後の時を求めていると佐助に示す。佐助の欲も、これ以上は堪えられそうに無かった。
「旦那、いっぱい、出していい? 旦那の中に、俺様の」
「ふっ、んぅうっ、ぁ、さすけぇ」
 求めるように幸村が啼き、それに心をわしづかまれて、佐助の腰がきわまった。
「くっ」
「ぁはっ、ぁあぁああああ――〜〜〜〜!」
 ど、とあふれた佐助の想いが胸に迫り、猛りきった幸村が崩壊する。淫靡な瞳で虚空を見つめ、満足そうに果てた幸村の唇に、佐助は熱い吐息を注いだ。

 すやすやと心地よく眠り、目覚めた幸村は真っ赤になりながら、佐助の視線から逃げるように小川に入った。残滓をそのままに、眠る幸村を抱きしめ休んでいた佐助も、小川に身を浸す。照れくささから頬を膨らませている幸村とは対象的に、佐助は鼻歌でも飛び出しそうなほど、上機嫌だ。その機嫌の良さを、自分が与えたのだと幸村は知っている。それが嬉しくもあり照れくさくもあって、幸村はますます膨れっ面となった。
「あ。そういやさ、旦那」
「なんだ」
 出てきた声音も不機嫌に聞こえる。それに、クスリと鼻を鳴らした佐助は、いたずらっぽい瞳で小首を傾げた。
「旦那の胸筋が、大将や鬼の旦那みたいになったら、どうして俺が喜ぶと思ったのさ」
「うっ」
「ねぇ、なんで?」
「そ、それは」
「それは?」
 佐助の追求から逃れられぬと、幸村は知りすぎるほどに知っていた。自分がうっかりこぼしてしまったのだからと、幸村は観念して喋ることにした。
「戦の折の不快な思いは、奥方の胸乳に顔を埋めて甘えれば、癒されるのだと言う者が、おった」
 唇を尖らせ、幸村が渋々と話しはじめたのを、佐助はじっと見つめる。
「奥方でなくとも、女子(おなご)の胸乳ならば、安堵すると。その、顔を埋められる胸乳は良いものだと。そういう会話を聞いたのだ」
「うん。それで?」
 そこで、ちらりと幸村は佐助を恨むように睨んで、すぐに目をそらした。
「佐助は、かすが殿に好意を持っているだろう」
「え? ああ、まぁ、うん。そうだねぇ」
 ここで「旦那のほうが、ずっと好きだよ」などと言えば、話の腰が折れてしまうので、佐助は言葉少なに、あしらうような返事をした。
「かすが殿の乳房は、その、お、大きいだろう」
 幸村の全身が朱に染まる。可愛いなぁ、などと思いつつ、佐助は頷いた。
「うん。おっきいねぇ」
「だ、だからだな、その……佐助は、その、俺の、そ、その……胸乳を、し、執拗に、その、するだろう。だから、その、なんというか……お館様や元親殿のように、もっと、俺の、その、俺の胸乳も、顔を埋められるほどになれば、佐助を癒せるのではないかと……思うたのだ」
 言い終わった幸村が、勢いよくしゃがんで水中に身を隠す。ゆらゆらと水に揺れる幸村の姿を、佐助は呆然と見つめた。
「えっと、それって……」
 たしかに佐助は幸村の胸乳を、執拗に扱っている。自覚はある。胸乳に顔を寄せるのも好きだ。だがそれは、幸村が胸乳をもてあそばれると、心地よく啼くからであって、彼を悦ばせようとしての気持が多分にあった。それが、そんなふうに受け止められていようとは。
「ふっ、く、くく、く」
 佐助の顔がだらしなく歪み、笑みがこぼれる。息が続かなくなったのだろう。幸村が鼻下までを水面に出して、佐助をうかがうように睨んだ。
「ああ、もう。旦那ってば!」
 佐助の胸中から愛おしさが溢れ出て、こらえきれなくなった彼は幸村を抱きしめた。
「な、なんだっ」
「もう。ほんと、俺様ってば果報者」
「佐助」
「大好きだよ、旦那」
 ちゅ、と軽く唇を寄せられ、上機嫌な佐助の様子に嬉しくなりつつ、照れくささから、それを表に出すまいと唇を妙な形に歪ませた幸村が、蚊の鳴くほどの小さな声で「俺もだ」と呟いた。

2014/07/28



メニュー日記拍手
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送