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なあ、佐助

 なるほど。形からすれば、俺が佐助に抱かれている、ということになろう。なれど俺からすれば、その逆としか思えぬ。
 このような破廉恥なこと、おいそれと許せるものではないが、佐助ならば別だ。この命を預けるに足る男であるし、あれほど信用できる者は他に無い。それに、俺とてそのような欲が無いわけではない。どういういきさつで始まったのか覚えてはおらぬが、佐助との交合は心地よく、面映いことだが、欲しいと思うこともある。
 だが、俺が求める前に、佐助が来るので、俺からそう望むことは無かった。今宵も佐助は闇の中からにじみ出て、俺の顔を覗きながら、そっと呼んだ。
「大将」
 近頃は、そのように呼ばれることにも慣れてきた。俺は目を開け、月光に浮かぶ佐助を見上げる。否。月光に浮かんでいるというよりは、闇に溶けかけているようにしか見えぬ。
「佐助」
 忍であるのだから、闇に溶けて動くは当然なのだろうが、それとは何かが違っている。俺は手を伸ばして、佐助の肉の薄い頬に触れた。
「ただいま、大将」
「うむ」
 佐助の顔が近付いて、唇が重なる。俺は真っ直ぐに佐助の目を見た。飄々として、さまざまのことを成す佐助の目は、夜にはひどく寂しげになる。それは小さくはかない生き物のようで、なんとしても守ってやらねばと感じさせられる。
「んっ……ぅ」
 佐助の舌が伸びてくる。口を開いてそれを招けば、そろそろと口腔をまさぐられた。佐助は俺の着物を剥ぎながら、喉の奥まで深くまさぐり、俺を求める。
「はふっ、う、う」
 あまりに深く探られて、涙が滲む。口内を撫でられるのは息苦しく、心地いい。体の底から熱が昇り、血の巡りを早くする。
「大将」
 甘えるような声音。俺は佐助の首に腕を回した。佐助の目が、うれしそうに細くなる。じゃれるような口吸いに、息が乱れる。佐助の細く長い指が、俺の肌を這う。くすぐったさとは別の、淡々としたものが生まれ、俺の下肢を熱くする。
「ふっ、ん、ぅう」
 角度を変えて、佐助は俺の唇を求めながら、俺の形を確かめるように両手を動かす。壊れ物を扱うような仕草に、俺はいつも笑ってしまう。
「っふ、は……佐助」
 俺も、佐助の頭をまさぐり、背を撫でる。すると佐助は着物を脱いで、裸身の肌を俺の手に触れさせようとする。佐助の肉質はしなやかで薄く、肉厚の俺とは全く違った手触りだ。別の人間に触れているのだと、はっきりと感じられる。
「大将」
 佐助の唇が頬に流れて、耳に触れる。唇で耳朶を噛まれ、耳の中に息を吹き込まれると、背骨がゾクゾクとした。
「ふふ、大将ぉ」
 甘ったるい佐助の声。
「ああ、佐助」
 佐助は、俺を呼ぶのが好きだ。俺に呼ばれるのも。
「大将ぉ」
 首に甘えながら、佐助は俺の胸筋をまさぐり、乳頭を指先で捕らえた。指の腹でくすぐられ、甘痒さに身を捩れば、佐助に肩を噛まれた。
「っ、は、佐助……っう」
 噛んだ場所を、舌がなぞる。舌は動いて、乳頭を拾った。赤子が母に甘えるように、佐助は俺の乳を吸う。ジワジワと湧き起こる心地よさに、俺の喉は獣のように鳴り、下肢がむず痒くなった。
「は、ぁあ、あ……ぅ、佐助ぇ」
 柿色の髪をまさぐれば、佐助はうれしそうに乳を吸った。
「んっ、ぁ……は」
「大将。気持ちいい?」
「……っ、聞くな」
「へへっ」
 人の事を子どもっぽいだの幼いだのと、散々言っておるくせに、こういう時の佐助のほうが、ずっと幼子のようだ。整った目鼻立ちを崩し、無防備に微笑む佐助に、心が熱くなる。
「佐助」
「うん」
 俺の声音で、佐助はなにもかもを察する。佐助の長く器用な指が、俺の魔羅に絡み、動いた。
「はっ、ぁ、あ……っふ」
「気持ちいい?」
「んっ、だから、聞くなと……ぁ」
「言いたくないなら、もっと声を上げて示して。ねぇ、大将」
 俺様を感じて、と佐助がささやく。そのような事を言われれば、きちんと佐助の存在を感じておると、示さずにはおれなくなる。声を抑えようという気が失せて、確かに佐助を受け取っておると、応えたくなる。
「ぁ、佐助……っは、ぁあ、あ」
 佐助の指が根元を擦り、クビレをしごいて先端を押しつぶす。そのたびに俺は腰を跳ね上げ、あられもない声を放った。
「んぁあっ、あ、佐助、さすっ……ふぁ、あ」
 ぬらりとした感触に、佐助の口内に含まれたのだと知る。柿色の髪が、俺の股間で揺れている。それに合わせて快感が全身に広がり、俺は佐助の髪を両手で探りながら、自分のものとは思えぬ、甘えたすすり泣きのような声を上げた。
「はぅ、うああ……っあ、さすっ、ぅ、佐助ぇ」
 たっぷりと口内で愛撫され、奥の蜜嚢を揉まれて、俺の意識に本能という名のモヤがかかる。
「んぁ、あっ、ぁあ……佐助、ぁあ」
「うん。いいよ、大将……いっぱい出して」
「ひぁ、ぁ、あぁあああっ!」
 強い刺激に、俺はあっけなく果てた。吸われ、佐助が飲み下す気配が伝わる。気だるさに包まれた俺の顔を覗き込み、佐助はイタズラっぽい笑顔で唇を押し付けてきた。少し、生臭い。
「ふふっ、たぁいしょぉ」
 妙な節をつけて呼ばれる。俺は手を伸ばして、佐助の頬を撫でた。佐助は目を糸のように細めて、うれしげに顔を擦り寄せてくる。俺はしっかりと、佐助の首を抱きしめた。
「大将」
 艶めいた声で呼ばれ、俺は足を広げた。佐助が、俺の身に沈みたがっている。膝を立てれば、佐助は「ありがと」とつぶやいて、俺の尻を割り開き、繋がる箇所を濡らし広げるために、油を垂らした。
「んっ、う」
 こればかりは、いくら回数を重ねても慣れぬ。佐助の指が俺に沈み、クネクネと動いた。
「大将。力、抜いて」
 そう言われても、わざと力を入れているわけではない。反射的にしてしまうのだから、それを抜くというのは至難の業だ。
「大将、ほら」
「あっ、ぁあ――ッ!」
 佐助の指が、ある一点を突くと雷に打たれたような衝撃が走る。
「ひぁ、あっ、さ、すけ……さすっ、ぁ、はぁああっ」
 佐助は執拗にそこを責めて、俺を翻弄する。乱されながら、佐助の指が増えるのと、先ほど放ったばかりの魔羅が、ふたたび熱く凝っていくのを感じた。
「あううっ、佐助、ぁ、ああ、はぁあ」
 腰の辺りで熱が渦巻いている。俺は佐助を力一杯抱き寄せて、逃さぬように腰を足で捕らえた。佐助はうわごとのように俺を呼びながら、指を動かす。
「ぁ、ああ、佐助っ、佐助ぇ」
「うん、大将」
 指が抜け、別のものが尻に当たる。熱くて硬い佐助の一部が、そろそろと俺を開いて侵入した。
「んあっ、あ、あ……は、はふっ、ぅ、うう」
「大将、息を吐いて。ほら……」
「ぁ、ぅんんっ」
 佐助が俺の魔羅を弄りながら、腰を進める。慎重に押し進んでくる佐助は熱く、太い。
「ぁはぁううっ」
「は、ぁ……入った。ねぇ、大将。わかる?」
 わかる、と答える余裕など無い。頭の先まで佐助に埋め尽くされ、空気を貪るのに必死な俺を、佐助は寂しそうな笑みで見つめる。
 まるで、手の届かぬものを見ているようだ。
「佐助」
 息を喘がせながら呼べば、佐助が唇を重ねて緩慢に揺れはじめた。佐助が俺の内側に、獣が縄張りを主張するように魔羅を擦りつける。俺の内側はそれに絡み、佐助の形を意識にまざまざと描かせた。
「ぁ、は……はんっ、ぁ、佐助、ぁあ」
「大将、ああ、大将――」
 佐助の荒く熱い息が、泣き声に聞こえるのは気のせいだろうか。繋がっておるというのに、佐助はひどく遠いものを望んでいるような顔をする。
「佐助、ああ、佐助……っは、ああ」
 だから俺は、確かにここにいると、佐助を力一杯抱きしめた。間違いなくお前を感じていると、幾度も名を呼んだ。
「うん、大将……大将」
 佐助はむずがる子どものように体を揺すり、俺を求める。佐助の熱に煽られて、俺の総身はこれ以上無いほどに膨らみ、弾ける時を望む。
「ぁあっ、あ、佐助ぇ、あ、はぅうっ」
「んっ、大将……一緒に、ぁ、あっ」
 佐助の短いうめきとともに、爛れそうに熱いものがドッと注がれる。
「っあぁあああ――!」
 俺は背をそらせて声を上げ、それを受け止めながら白く弾けた。
「あ、ぁあ……あ」
 体中から力が失せる。ふわふわとおぼつかない肌を、佐助が痛いほどに抱いてくる。
「大将」
 声を出す気力も残っていない俺は、なんとか笑みを浮かべて佐助を撫でた。顔をクシャクシャにして笑う佐助が、唇を寄せてくる。
「大将」
 佐助、と息で呼べば、佐助がうれしそうに頷いた。
 俺は、たしかに佐助を感じている。俺はここにいる。だから、心配をするな。佐助。どのようなことがあっても、俺は佐助を手放したりはせぬ。お前の帰る場所は、ここだ。お前の居場所は、ここにある。だから、もう……そのような顔をするな。佐助の手の届く場所に、俺は在り続けるぞ。なあ、佐助――。

2015/09/18



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