真田幸村がそろそろ眠ろうと褥に入ると、部屋の隅の闇が膨らんだ。「佐助?」「ご名答」 身を起こした幸村の目に、闇が人の姿を産むのが映った。現れたのは山の葉や草の色をまだらに染めた忍装束を身にまとった、茜色の髪をした目の細い青年だった。「帰ったのか」「見ての通り」 軽く肩をすくめた猿飛佐助は、主に対するとは思えぬ気やすい様子で幸村の枕元に進んだ。「はー。もう、俺様すっごい疲れちゃった」「そうか。ご苦労だったな、ゆっくり休め」「うん。そうさせてもらうぜ、大将」 佐助の手が幸村の胸元の合わせから内側に入って、幸村はぎょっとした。「さ、佐助」「うん?」「俺は、休めと言ったのだが」「俺様も、そうさせてもらうって答えたけど?」 佐助の手は幸村の盛り上がった胸筋を掴んだ。さりげなく幸村の背後に体を移し、逃げられぬようにもう片手で帯を掴んだ佐助に、幸村はけげんに眉をひそめた。「休もうとしておるようには見えぬのだが」「わかってないなぁ、大将は」「なにがだ」「うんと疲れていたら、気が高ぶって眠れなかったりするだろ」「うむ」「だから、その高ぶっている気持ちをいやそうとしてるわけ」 言いながら、佐助の指は幸村の胸の尖りに触れた。指の腹でつまみ転がされて、幸村の喉が快楽に詰まる。「っ……、佐助」「なぁに、大将」「いやしというのは、のんびりと心やすく過ごすことではないのか」「そのときの状況とかにも、よると思うぜ」「そ、そうなのか?」「そうそう。いまの俺様にとっては、これが一番の、いやし」 佐助の唇が幸村の首筋に触れる。うなじを舌先でくすぐられて、幸村は喉奥でうめいた。「佐助」「んー?」「……っ、う」 佐助の指は器用に動き、幸村の胸乳をクルクルともてあそぶ。すると幸村の胸の尖りは硬く凝り、痺れたようなうずきを発して、肌がじわりと粟立ってしまった。「は、ぁ……、佐助」「ふふ。気持ちいい?」 幸村が口をつぐむと、佐助はクスクスと喉を鳴らして幸村の耳裏に舌を伸ばした。帯を掴んでいた佐助の指はするすると帯を解き、幸村の鍛え抜かれた腹筋に触れた。その指が下へ流れる。「ふっ、あ、佐助……、んっ」 下帯ごと蜜嚢を持ち上げるように下肢を掴まれ、幸村は息を詰めた。佐助の熱っぽい息が幸村の耳朶にかかる。「大将の、まだちょっとやわらかいね」「っ、あ、佐助……、さす、んぅ」 胸の尖りを爪ではじかれ、布越しに陰茎を手のひらでこすられる。ぞわぞわと甘い風が肌を滑って、幸村は硬く目を閉じこわばった。「ふふ。だんだん、固くなってきた」「は、ぁあ、言うな」 楽しそうに下肢の変化を告げられて、羞恥のために鋭い声となる。そんな幸村に佐助は小首をかしげた。「なんで?」「う、うう……」 恥ずかしいから、と言えるはずもなく幸村がうなると、佐助はしつこく「なんで、ねぇ」と聞いてくる。「うるさいっ」「あ。ひっでぇなぁ、大将ってば。俺様にゆっくり休めって言ったんだったら、そうできるように協力してくれよ」「きょ、協力?」「そ。たとえば、積極的に口吸いをしてくれるとか」「えっ」 にこにことした佐助の顔が眼前に迫り、唇がふさがれる。「んむっ……、んっ、は」 ぬらりとあたたかな舌が口内に入って、幸村は困った。すぐ近くに、うきうきと輝く佐助の目がある。幸村はぎこちなく舌を動かした。すると佐助はうれしげに目を細め、舌を絡めてきた。「んふっ、ふぅ、うっ、う……、うんっ、ん」 舌を吸われて、下肢に鋭い刺激が走る。佐助の握る幸村の熱が震えて硬さを増した。「ふっ、大将の、ちょっと固くなった。口吸い、気持ちいい?」「んはっ、は、聞くな……、あっ」「教えてくれてもいいだろぉ」 弾んだ声で不平を漏らす佐助の指が下帯をずらした。「あっ」 牡のくびれに布がひっかかる。ぐいと引かれて外れた刺激に、幸村は甘い声を漏らした。「はは。大将の、元気に飛び出してきた」「っ、おまえが出したのだろう」「窮屈そうだったから、出してあげたんだろ」「ひっ」 寝かされたかと思うと、佐助の口に牡を含まれた。あたたかな口腔に包まれ吸われれば、えもいわれぬ官能が背骨を駆け抜ける。「んふっ、おいし」「はっ、ああ、佐助、あ、ああ」 佐助の舌先が鈴口をちろちろと刺激する。くびれに軽く歯を立てて吸われ、幸村は鼻にかかった悲鳴を上げた。根元を指でこすられて、やわやわと蜜嚢をもまれながら口淫をほどこされ、幸村の牡はすっかり怒張し先走りをあふれさせた。佐助はそれを、獣が水を飲むように、わざと音を立ててなめる。「んっ、大将の、いっぱい出てきた」「は、はふっ、言うな、あっ、ああ……、んっ」きつく吸われて、幸村が思わず腰を浮かせると、佐助の手が尻の下に敷かれた。指が動いて尻の谷をまさぐる。「ふっ、ふぁ、あっ、佐助、あ、ああ」 佐助の唇が蜜嚢に移動したかと思うと、腰を高く折り曲げられる。自分の足先が頭上を越えて、折りたたまれた幸村の目の前に興奮しきった己の牡が現れた。「っ――!」 体中が羞恥に熱くなる。佐助は上機嫌な様子で幸村の脚の間から顔をのぞかせ、蜜嚢をしゃぶりながら幸村の表情を確かめている。「ぅ、く……っ」 ぷいと幸村はそっぽを向いた。とがめるように蜜嚢を強く吸われる。「はっ、ああ」 ぱた、と自分の先走りを頬に受けた幸村は、羞恥で心臓が張り裂けそうになった。「大将、かーわいい」 なにを言っているのかと、幸村は毎回思う。佐助はこういう行為のとき、いつもそう言うのだが、なにがかわいいのか幸村にはさっぱりわからない。「ちょっと、ひやっとするけど、すぐに熱くなるからさ。――って、説明しなくっても、わかってるよな」 にこっとした佐助が大蛤の軟膏入れを取り出した。それがどこに塗られ、そうされるとどうなるのかを思い出した幸村の四肢は緊張し、陰茎は期待に震えた。「さ、佐助」「そんな不安そうな声を出しなさんなって。すぐ、気持ちよくなれるんだから」「んあっ、あ、ああ」 たっぷりと軟膏をすくった佐助の指が、幸村の尻の谷に触れて秘孔の口をなぞった。かと思うと、指はすぼまりの奥へと沈み、軟膏を塗りつけて抜けた。「は、ぁあ、あっ」「たっぷり濡らしておかないと、ケガしちまったら大変だもんなぁ」 鼻歌まじりの佐助は、軟膏を指に乗せては幸村の秘孔に塗りつける。軟膏がすべて秘孔に移ると、次は指を深く沈めて、内壁に軟膏を広げられた。「っ、は、ふん、ぅ、ううっ」 佐助の指を内壁で感じながら、幸村は肌身を震わせた。喉奥にせりあがってくる快楽と、ぱたりぱたりと頬にしたたる己の先走りの匂いに脳髄がとろける。「ふふ。大将のココ、だいぶほぐれてきた」「んぁあっ」 内壁の過敏な箇所をえぐられて、幸村は大きく痙攣した。陰茎が揺れて先走りが飛び散り、欲の匂いが空気ににじむ。「ふっ、ふぁ、佐助、ぁ、そこ……、ぉ」「んふふ。この大勢だと、ちょっと苦しいかな」 背中を支えていた佐助の体が離れ、天井を向いていた尻が床につく。痛むほどに張りつめた自分の欲を見ないで済むことに、幸村はほっとした。「ふふ。たぁいしょっ」 声を弾ませた佐助が、幸村におおいかぶさる。頬をなめられ視線を向ければ、とろける笑みで「大将の蜜、顔にいっぱいかかってんぜ」と指摘された。「なっ、ば……、っ」「んふふ」 わなわなと唇をふるわせてにらんでも、どこ吹く風と佐助は上機嫌をくずさない。口ではかなわないと知っている幸村は、むくれて顔をそむけた。「大将ぉ」 猫なで声で幸村の首筋に顔をうずめた佐助の指が、淫らに動く。「ふっ、んぅうっ、あ、ああ」 むっつりと閉じた幸村の口は、あっさりと開いて淫奔な音を出した。「もうそろそろ、いっかなぁ」 佐助の指が抜ける。ほっと息をついた幸村は、脚を抱えられて下唇を噛んだ。次に何がくるのか、わかっている。「もう。毎回そんな緊張しないでよね。まあ、そんなところがかわいいんだけど」 ちゅっと音を立てて、こめかみに唇を落とされる。秘孔の口に硬いものが触れて、幸村は奥歯を噛んだ。「そんなに緊張されてちゃ、入れないだろ。ほら、力抜いて」 そういわれても、できるものではない。佐助は慣れた様子で幸村の顔中に唇を押しつけながら、尻の谷に己の陰茎をこすりつけた。「んっ、ふ……、ぁ、んぅっ、む、ふぁ」 佐助の舌が幸村の口腔に侵入し、なだめるように動き回る。口内の甘い刺激と尻の谷の淫靡な熱に、幸村のこわばりは徐々にほぐれた。そうして佐助の深い口吸いを受け入れた幸村の腕が、そろそろと動いて佐助の首にかかる。すがるように幸村が佐助の首に腕をまわすと、尻の谷をこすっていた熱が秘孔を割り開いた。「ひぎっ、が、ぁあ、あ……、っ、ふ、ぅんぅう」 目を見開いてのけぞった幸村の胸に佐助の唇が移動する。胸の尖りを舌ではじかれ、もう片方を指でつぶされこねられて、圧迫の緊張がわずかにゆるむ。「はっ、はぁ、あっ、ふ、ぅう、んくぅう」 佐助が緩慢に腰を動かし、幸村の内壁に蠢動をうながした。「くっ、大将……、すご、キツキツ」「ぅは、はぁ、あっ、んっ、はぁあ」 乳頭に歯を立てられて、反射的に佐助の頭を胸に抱えて腰を跳ねさせた拍子に、飲み込みきれなかった佐助の熱が奥まで入った。「はぐぅううっ」「ぁ、あ……、大将、はぁ、すっご」「んううっ、さす、佐助ぇえっ」 内壁が媚肉に変わるのを感じながら、幸村は佐助の熱に内側を擦られ震えた。体の芯が溶けて、腰のあたりにえもいわれぬ快楽が渦を巻く。「ふはっ、さすぅう、あ、佐助ぇ、あっ、ああ」「大将、気持ちいい?」「ふっ、ふぁ、あっ、佐助、んぅっ、あ、ああ」 佐助の質問に、幸村は身をくねらせて答えた。自分の高ぶりを覚えつつ、佐助の熱が勇躍するのを感じた幸村の心が、ただれるほどに熱いよろこびに満たされる。「はっ、佐助ぇ、あっ、はんっ、は、ぁあ」「大将、は、ぁあ、すごい……、ああ、大将」 うわごとのように繰り返す佐助の瞳が、淫靡にとろけている。血の気の薄い頬が上気し、うっすらと肌が汗ばんでいることに、幸村は幸福の笑みをにじませた。「なに、その顔……、大将、すっごいヤラシィ」「んぁ、佐助が……、させておるっ、のだ……、は、ぁあ」 幸村は佐助を掻き抱いた。乱されているのは己なのに、佐助を抱いているような気持ちになっている。「は、ぁあ、佐助っ、佐助ぇ」「うん、うん……、大将、ぁ、受け止めて、俺様のぜんぶ」「ふっ、……こい、佐助」「んっ、ぅ」 佐助の熱が幸村の内壁をえぐり、最奥を突いたかと思うと想いがほとばしった。「ぁはぁあああっ」 大きく背をそらせて内壁で佐助を抱きしめながら、幸村も極まりを迎える。痙攣する内壁に佐助が熱を擦りつけながら、筒内に残ったものを吐き出しつつ、幸村の牡もしごいて絶頂の名残を絞った。「は、はぁ……、あ、あ」 余韻に胸を喘がせる幸村の頬に、佐助が頬をすり寄せる。「はぁ、いやされる」 心地よさそうな佐助の髪に、幸村は指を沈めた。すこし湿ったそれをかき混ぜていると、唇を軽く吸われた。「休めそうか」「ん。……大将、いっしょに寝よ」 全身で甘えてくる佐助に、幸村は目じりを細める。「おやすみ、佐助」「おやすみ、大将」 吐息を重ねた幸村は、そうは言っても自分が寝入るまでは眠らぬであろう佐助のために、いち早く眠りの底へと意識を沈めた。 2016/06/04