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熱い雪

 雪で世界が閉ざされれば、将の仕事も制限される。動き回るのは諜報に長けたもののみ。行商人さえやってこない。
 雪におおわれた山を越えるのは、命の危険があるからだ。
 背丈よりもうず高く雪が降り積もる季節になると、誰もが身を寄せ合って家にこもり、春に命をつなぐために息をひそめる。
 そんな時期、猛々しく槍を振るい、紅蓮の炎となって戦場を駆け巡る若き虎と呼ばれる猛将、真田幸村は英気を持て余しているだろうと予測したのか、どうなのか。
 届いた手紙に、幸村は一も二もなく主であり師でもある武田信玄に外出の許可を願い出て、渋る己の忍、猿飛佐助に奥州に連れて行ってほしいと頼んだ。
 忍相手に将である幸村が頼むというのもおかしな話だが、幸村はそういう青年だった。忍を道具と思わず、友と考えている。そんな幸村の心根にほだされて、佐助はしぶしぶといったふうに細い目をさらに細め、あざやかな茜色の髪を指先で掻きながら、しかたがないなと了承した。
「すまぬな、佐助」
「すまないなんて、ちっとも思っていないでしょうが。ま、ついでに、右目の旦那自慢の冬野菜を土産にできれば、ありがたいしねぇ」
 奥州の領主、伊達政宗の腹心、片倉小十郎は武将としての力量もさることながら、野菜作りでも日ノ本全土に名をはせている。彼の作る雪をかぶった大根などは、さぞや甘いことだろうと、佐助は気の進まぬ己をなだめて人を運べるほどに大きなカラスを呼んだ。
 その足に捕まって、幸村は佐助の先導に従い、奥州を目指した。少年らしさを残した頬は、目指す場所にいる相手を思って上気している。大きな茶色の瞳は、自他共に認めている好敵手と、久しぶりに相まみえるよろこびにかがやいていた。
 佐助はやれやれと吐息をこぼして、そんな主を横目で見た。
(旦那が考えているような理由で、呼ばれたわけじゃないと思うけどねぇ)
 心のなかでぼやいた佐助は、あるいは幸村の心中も、それを期待しているのではと疑った。
(まさかね)
 色事にうとく、おそろしいほどに初心な幸村が、よもや政宗との睦言を期待しているはずがない。純粋に手合わせができると、わくわくしているのだろう。その証拠に、幸村は湯治の誘いであったのに、しっかりと愛用の槍を背に負っている。
「政宗殿は、湯治場にて待たれておられるのだったな。場所はわかるのか、佐助」
「俺様を誰だと思ってんの? わかるに決まってんでしょ」
 カラスの体調も考えて、途中で休憩をしながら到着した幸村は、簡素ながら立派な建物に向かって「頼もう!」と声を張り上げた。
「政宗殿の御招きをいただき、参上仕った」
「そんなに声を張り上げなくとも、聞こえているぜ? 真田幸村。I'm delighted to see you」
 ニヤリとした政宗の美麗な顔立ちに、艶やかなものが浮かんだ。幸村は気づかず、ニコニコしている。佐助は自分が邪魔ものであると察して、頭の後で腕を組んだ。
「俺様、片倉の旦那に用事があるんだけど?」
「小十郎なら、奥にいるぜ。勝手に上がれよ」
「勝手にしちゃっていいわけ?」
 佐助が皮肉を込めて言えば、政宗は鼻先で笑った。
「竜を前に、猿ごときが好き放題できると思うなよ?」
「そうやって甘く見てると、痛い目見るぜ?」
 敵意を思い切り込めた目で笑った佐助は、すぐに姿を消してしまった。
「あ、佐助」
「あんたは、こっちだ。Come with me」
「お邪魔いたす」
 ペコリと頭を下げた幸村の、クセの強い茶色の髪に雪が積もっている。政宗の細く長い指が伸びて、それを払った。
「遠路はるばる、よく来たな」
「佐助がおれば、移動も可能と思われての文だったのでござろう?」
「まあ、そうだ」
 幸村はうれしそうに頬を持ち上げた。彼の背にある槍に目を向けて、政宗はフッと口元をゆがめる。
「体が冷えただろう。まずは、湯につかってのんびりするとしようぜ」
 後方に顎をしゃくった政宗の、絹糸のように細い黒髪が揺れて、右目の眼帯がよく見えた。長い前髪の奥に見え隠れしている眼帯の冷たいかがやきに、幸村の胸がざわめく。あれは身に着けていて、冷たくないのだろうか。
 雪のように白い肌に触れたくなって、幸村は赤くなった。
(なにを考えておるのだ、俺は)
「どうした?」
「なんでもござらぬ」
 幸村は政宗の後を追った。
 天然の湯殿は岩に囲まれていた。岩の上には雪が降り積もっている。脱衣所で政宗は無造作に裸になった。しなやかな獣を思わせる白い肢体に、幸村は胸を高鳴らせる。
「Ah? どうした。ぼうっとして」
「ああ、いや……某は、冬でもお館様とともに鍛錬をしておりまするが、政宗殿も片倉殿と手合わせなどを?」
「しちゃあいるが、そっちほどじゃあないと思うぜ?」
 政宗は領主としての責務もあるから、修練にばかりかまけてはいられないと言っているのだと、幸村は解釈した。政宗は言葉通りの意味で言ったのだが。
 幸村も着物を脱ぎ、裸身になった。ひと房だけ長い後ろ髪が背中で揺れる。褐色のはち切れそうな若さを含んだ肌に、政宗は妖しく目を細めた。
 ふたりは連れだって湯船に向かい、ゆっくりと体を沈めた。湧き上がる湯は冷えた体を、はじめは刺すように刺激したが、慣れるにしたがって骨身にまでぬくもりがしみ込んだ。
「飲むだろう」
 政宗が湯の湧き口付近にうずめていた瓶子を顎で示した。
「いい具合に、ぬくもっているだろうぜ」
「これは……かたじけない」
 盃を受け取り、酌をされて幸村は口をつけた。血色のいい幸村の唇を酒が濡らす。政宗は白い肌をほんのりと桃色に染めていた。その艶めかしさに、幸村の心臓はドキドキと高鳴っていた。
「幸村」
「なんでござろう」
 返事の声が硬くなって、幸村は真っ赤になった。政宗がクックッと喉を鳴らす。
「相変わらず、わかりやすいな」
「な、なにが」
 幸村はさらに赤くなる。政宗は手を伸ばして、盃を持つ幸村の手首を握った。
「盃よりも、俺の口に唇を当ててもらいたいって言ったら、どうする?」
「なっ、な……あっ、うう」
 真っ赤になって、幸村はうつむいた。政宗はまたクックッと笑って、幸村を引き寄せる。
「まさか、手合わせをするために俺がアンタを呼んだとは、思っちゃいねぇだろうな?」
「それは……違うのでござろうか」
「したいのは山々だがな。雪崩が起きそうだ」
「うむぅ」
「こっちの手合わせなら、そんな心配はしなくてもいいだろう? そう思わないか、幸村」
「う……ぐっ」
「どうした。まだ、そんなに飲んじゃいねぇはずだがな」
 耳まで真っ赤になった幸村を、政宗はからかう。
「俺は、そのつもりで文を送った。待ちかねて、準備万端、整えていたんだぜ?」
 えっ、と目をまるくした幸村に、政宗は顔を寄せた。口をふさがれた幸村は目を白黒させながら、ぬるりと口内に侵入する舌を感じた。それに引き出されるものを、体は覚えている。幸村は早鐘のように鳴り響く心音を知られてしまうのではと危惧しつつ、政宗の舌を口を開いて受け入れた。
「んっ、ふ……ぅ……んんっ、ん……ぅ、う」
 鼻から甘えた息が漏れる。幸村は自分の声とも思えぬものを、政宗に引き出される行為を覚えていた。切っ先を向けて交えるものとは違う、けれど文字通り体をぶつけ合う営みは、違う意味で血沸き肉躍るものだった。
「んっ、ふぅ……はっ、ぁ、んんっ」
「そこに上がれよ、幸村」
 うながされて、幸村は従った。岩に座ると、政宗の唇が首に触れ、鎖骨のくぼみに移動する。キュウッと吸われて、うっ血ができた。政宗の印を刻まれるのは、どのくらいぶりだろうか。そう思うと、幸村の下肢に血が上った。
「あんたも期待していたのか? それともkissだけで反応しちまったのか」
「うっ、そ、それは」
 意地の悪い質問に、幸村は視線をさまよわせた。彼の初心な反応に、政宗は機嫌よく目を細める。
「もっと、熱くさせてやるよ」
「政宗殿……あっ、んぅ」
 政宗の唇が幸村の盛り上がった胸筋を滑り、プツッと浮き上がっている場所に到達した。チロチロと舌先でくすぐられると、淡い痺れが肌に広がる。甘い波紋は幸村の肌を粟立たせ、欲の証を凝らせた。
「んっ、はぁ……あっ、政宗殿……ぅ」
 政宗はニヤニヤしながら幸村の乳首を味わい、たっぷりと濡らして育てた箇所に爪を立てた。
「ヒッ」
 幸村の喉が鳴る。政宗は濡れた箇所を指でもてあそびながら、もう片方を濡らしにかかった。
「んっ、はぁ……あっ、ああ……く、ぅうっ」
 左右の突起をいじられて、幸村は手の甲で口をふさいだ。漏れる息がどれほど政宗を興奮させるかも知らずに、素直に愛撫に反応している。下肢のものがいきり立ち、もどかしさに閉じようとした幸村の脚が、政宗の体にはばまれた。
「ふはっ、ぁ……んっ、ぅう……は、ぁ……政宗殿ぉ」
「どうした、幸村。そんなに甘い声で呼んで」
「ふぁっ、あ、そのような……ことは」
「あるんだよ。very excited……たまらねぇ」
「ひぅっ、あ、んんっ」
 乳頭に歯を立てられて、幸村は顎をそらした。政宗の手が幸村の腰を掴み、唇が腹筋の筋を滑ってヘソに触れ、立ち上がった幸村の槍の穂先に触れる。先端を舌先でくすぐられて、幸村はヒクヒクと痙攣した。
「んぁっ、あぅ……はっ、ぁ、あ、ふぁうっ」
 舌先で先端をくすぐられるだけの刺激が、もどかしいのに最高に気持ちいい。快楽にビクビクと震えながら、幸村は政宗の肩を掴んだ。
「ふはっ、ぁ、ああ……っ、ぅ、ううっ」
 政宗は幸村の反応にほくそ笑みつつ、舌先で根元から先端までを、じっくりと時間をかけて舐め上げた。だらしなく口を開き、声を震わせる幸村の目が固く閉じられる。必死に快感に堪える幸村の指が、政宗の肩に食い込んだ。
「痛ぇ」
「あっ、も、申し訳ござら……んぅっ」
 ぱくりと張り出しを食べられて、幸村は謝罪を言い切ることができなかった。口内に包まれた先端を舌で舐め回された幸村の甘い啼き声が、政宗の後頭部に降り注ぐ。政宗はそのまま喉奥まで幸村を呑み込むと、頭を上下させつつ吸い上げた。
「ぅはぁあっ、あっ、政宗殿っ、それ……あっ、ああ……んぅうっ、は、ぁあっ」
 温かなものに包まれ、圧迫されて、幸村の槍は脈打ちながら先走りをあふれさせた。政宗はそれを吸い上げて呑み込む。政宗の口腔に陰茎を絞られて、幸村は愉悦の悲鳴を上げた。
「はぁううっ、政宗殿……ああっ、もう、あっ、ああっ」
 久しぶりの悦楽に、若い体が抗えるはずもない。絶頂が近いと政宗の背中を叩いて訴えて、口を放してほしいと望む。しかし政宗は幸村の願いを聞かず、そのまま彼の子種を吸い上げてしまった。
「ぅはっ、あ、あぁあああ――っ!」
 腰を大きく震わせて、精を漏らした幸村は、涙の滲んだ目で唇を舐める政宗を見た。艶めかしくも挑戦的な瞳の光に、ゾクリと淫靡な悪寒を味わう。
「次は、あんたが俺を飲む番だ」
「そ、某……うまくできるかはわかり申さぬが」
「No、幸村。口でしろと言っているわけじゃねぇ。まあ、どうしてもやりてぇってんなら、じっくりと教えてやってもかまわないぜ?」
 不敵な政宗の笑みに、幸村はうろたえた。
「あ、あう……そっ、あ……っ」
「幸村」
 両頬を手のひらで包んで、政宗は幸村の唇に口を押し当てた。
「アンタの奥を味わいたい。ふたりで最高に熱くなろうぜ」
 淫靡な誘いに、幸村は瞳を潤ませながらうなずいた。政宗は湯船から上がり、幸村を岩の上に這わせた。引き締まった小ぶりの尻に手をかけて左右に開き、ひっそりと咲く菊に舌を伸ばす。
「んっ、ぅ……はぁ、あっ、んんっ、ん」
 こぶしを握り、幸村はすぼまりに押し入る舌を感じた。放ったばかりの陰茎が、ピクリと反応する。舌で入り口を丹念にほぐされると、幸村の下肢はすぐに元気を取り戻した。
「は、ぁ……んっ、んんっ」
 グニグニと舌を動かし、幸村の秘孔にたっぷりと唾液を含ませた政宗は、指を入れて緊張している内壁をあやしにかかった。もう片手で幸村の陰茎を擦り、先走りを指に絡めて、それを秘孔に塗りつける。自分の液で奥を濡らされていると気づいて、幸村はギュッと目を閉じた。自分の体のすべてが、政宗を受け入れるために存在しているかのような錯覚を起こす。
「ひさしぶりだ……たっぷりと濡らして、ほぐしてやらないとな」
 政宗は幸村の尻をほぐしながら、彼の蜜嚢を己の猛りでつついた。幸村を広げ、昂らせながら己の欲を擦りつけ、興奮を高めていく。
「ふはっ、ぁ、ああ……んっ、んぅう」
 政宗の熱を感じて、幸村の興奮が増した。求められているのだと、蜜嚢に当たる熱さが伝えてくる。
「は、ぁあうっ、んっ、は、ぁあ」
 指にほぐされた幸村の内壁は媚肉へ変化し、政宗の指に絡みついた。準備は整ったと、政宗は濃艶なよろこびに唇をゆがませる。
「いくぜ、幸村。息を吐け」
「んっ、は……っ」
 グッと政宗の怒張が幸村の秘孔に押し込まれる。狭い箇所は、指よりもはるかに質量のあるものに軋んだ。
「がっ、ぁぐ……ぅ、は、ぁあ……あっ、あぉ、ううっ」
 うめく幸村は、息を吐こうと口を開いた。しかし体は勝手に緊張し、喉に息が詰まってしまう。政宗はそれと気づいて手を伸ばし、幸村の陰茎を右手で擦り、左手で乳首をつねった。
「んはっ、ぁ……ああっ」
 快楽に押し出された嬌声が、詰まっていた幸村の息を通した。政宗はそのまま愛撫を続けつつ、己をゆっくり幸村の内壁に根元までうずめた。
「は、ぁ」
 キュウキュウと入り口に根元を締めつけられて、政宗は息を吐いた。幸村は浅い呼吸に肩を揺らしている。
「幸村」
「んっ……ぁ、政宗殿」
 肩越しに見つめ合った瞳は、どちらも淫靡に揺れていた。政宗は小刻みに緩慢な律動をはじめ、幸村はちいさな快楽の悲鳴を上げる。やがて媚肉が政宗の質量になじむと、交合は大胆になった。
「んはっ、はぁあっ、あ、はぁあうっ、んぁっ、あ、はぁううっ」
 肌がぶつかる音がするほど、政宗は幸村を突き上げた。幸村はそれを受け止め体を揺らし、自らも快楽を追い求めた。うねる腰つきに夢中になって、ふたりは湧き上がる淫欲に従った。政宗の先走りが幸村の内部を濡らし、抽送がなめらかになる。汗が吹き出すほどに政宗は幸村を追い立て、幸村はそれをしっかりと受け止めて、蠕動する内壁で迎え撃った。
 陰茎にすがり、締めつけてくる幸村の最奥に、政宗は情欲をほとばしらせた。熱いものに奥を叩かれ、幸村は首をのけぞらせて極まりの嬌声を遠吠えのように響かせる。
「ぅはあぁあああ――っ!」
 ビクンビクンと痙攣する幸村の媚肉が、政宗の陰茎を絞った。ゆるゆると腰を動かし、内壁のわななきに己を扱いた政宗は、ぐったりとした幸村から抜くのを惜しんだ。
「幸村」
「――ん」
 ぼんやりとした声に、政宗は口角を持ち上げる。
「この程度で、へばるアンタじゃねぇだろう?」
 尻を叩けば、幸村がちいさくうなった。
「う……政宗、殿」
「まだ、足りねぇ。アンタはどうだ? 真田幸村」
 幸村は腕の力で前進し、ずるりと政宗を抜いた。トロリと秘孔から淫らな液が零れ落ちる。太ももにそれを垂らして、幸村は体を反転させた。
 気だるい色気をまといながらも、さわやかな笑みを浮かべた幸村は、挑戦的な目で言った。
「某も、負けてはおりませぬ」
 およそ淫靡な誘いとは思えぬ言葉に、政宗は満足げな顔になった。幸村もニンマリと剣呑な笑みを浮かべる。
「上等だ。指先ひとつ動かせねぇほど、たっぷりとヤり合おうじゃねぇか」
 伸ばされた政宗の手を、幸村はどこか無邪気な気配を残す、不敵な笑みで受け入れた。

2018/01/22



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