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光栄だね

 熱波とともに槍が繰り出される。風に乗ってかわした緑の影が、遠い場所に降り立った。
「ふー、おっかねぇ」
 怖がっているというよりも、楽しんでいる口調でつぶやいたのは猿飛佐助。茜色の髪に鉄の面当て、濃淡のある木の葉色の忍び装束に身を包んでいる彼は、盾のように巨大な手裏剣を担ぐようにして片足で立っている。
「もっと真面目に相手をせぬかっ、佐助!」
 そう叫んだのは茶色のクセ毛に、幼さを感じさせる丸みのある頬をしている青年、真田幸村だった。真っ赤なハチマキの尾とともに、ひと房だけ長い後ろ髪が背に流れている。戦装束も赤い。白い袴には彼の気質を表すような、燃え上がる炎の柄がついていた。
「真面目に、ねぇ」
「そうだ。本気で来い!」
 吠える幸村に、佐助はすこし考える顔をして、ニンマリした。
「それじゃ、遠慮なく」
 不穏な気配をかもした佐助の体が、ふたつに割れる。ハッとした幸村は槍を振るった。影が切っ先をかすめる。
「惜しいっ」
「ぬぅっ!」
 さらに深く突こうとした幸村の動きが止まった。グッと歯を食いしばっても、体がまったく動かない。ふたつに割れた佐助の片方が、ゆっくりと幸村に近づく。もう片方の姿は見えなかった。
「まったく。俺様たちが本気でやりあったら、道場が吹っ飛んじゃうでしょうが」
「くっ……何をした、佐助」
「何って、旦那の影に潜り込んで、動きを封じたのさ」
「ぬぅうっ」
 全身の筋肉を盛り上がらせて、抗おうとする幸村は指先すらも動かせなかった。
「それじゃあ、本気でいかせてもらいましょうかねぇ」
 不敵に笑った佐助の指が、幸村の胸当てにかかる。ピッと浮いた胸当ての内側に、するりと指が入り込み、盛り上がった胸筋を掴んだ。
「ぅ、む?」
 けげんな顔をする幸村の唇を、佐助の口がかすめる。目を丸くした幸村は、佐助がしようとしていることを悟った。
「さ、佐助」
 しかしまさかと疑いつつも、幸村の満面には血が上る。
「旦那が予想している通りだよ」
 ニッコリとした佐助に、幸村は慌てた。
「なっ、こ、このような所で」
「人払いはしてあるでしょ。大丈夫だって、誰も来ないから」
「なれど」
「本気で来いって言ったのは、旦那だよ? 相手の動きを封じるのは、こういう方法もあるってこと」
 するりと滑った手が、乳首にかかる。つままれた幸村は喉奥でうめいた。クリクリと指の腹でつぶすように転がしながら、佐助は幸村の耳に声を注ぐ。
「忍のやることは、何でもありなんだぜ? 旦那」
「んっ、ぅ……くっ、ふ、ぅ」
 両方の乳首をつまみ、捏ねられながら耳朶を噛まれた幸村の肌が淫靡な熱に火照った。小刻みに肌を震わせる幸村に、佐助が艶やかに目を細める。
「旦那は、ほんと敏感だよねぇ。たったこれだけで、魔羅を大きくしているんだろ?」
「なっ、そ、そのようなことは」
「ない? それじゃ、確かめてみよっか」
「あっ」
 腰の防具が外されて、帯を解かれた袴が落ちる。下帯の前は、しっかりと膨らんでいた。
「ほうら。もう、こんなにしちゃってる」
「うっ、ぁ……くっ」
「ふふ、イイ調子だねぇ、旦那」
 下帯の横から取り出された陰茎を扱かれて、幸村は喉をそらした。喉仏に唇を寄せて、陰茎を扱きながら下帯を奪った佐助は、尻の谷をなぞった。ゾクゾクと幸村の背骨を甘美な悪寒が駆け抜ける。
「ふはっ、ぁ、あ……んっ、くぅ」
「旦那、ちょっとイジワルさせてもらうぜ?」
 影に潜んでいた佐助の分身が現れて、幸村の尻を掴んだ。肉を開いてすぼまりに唇を寄せる。
「ひあっ」
 秘孔に尖らせた舌を差し込まれ、幸村は甲高い悲鳴を上げた。本体の佐助の唇が乳首を含み、陰茎を扱かれながら吸われた幸村は首を振った。
「ぅはっ、は、ぁ、あっ、ああ、あ……あっ、ん」
 陰茎からこぼれた先走りが、扱く指の動きをなめらかにする。佐助は陰茎の切れ目に指を突き立て、グリグリと刺激した。
「ひぁあうっ、は、ぁ、ああっ、ん」
 のけぞった胸筋が突き出され、乳首を甘く噛まれる。秘孔を探る分身の舌が離れて、指が差し込まれた。
「ひふっ、ぅあ、はっ、ぁ、ああっ、さ、すけ……んぁあっ」
「感じすぎちゃってヤバイ? ふふ、だよねぇ……でも、本気で来いって言ったのは、旦那だぜ?」
「んぁあっ、あ、は、ぁあ」
 敏感な箇所を同時に責められ、急速に情欲を高められる幸村の目に、涙が滲んだ。
「はぁ、たまんない……その顔」
 吐息を漏らした佐助の唇が乳首から離れる。濡れそぼった乳首は真っ赤に腫れて、可憐に震えていた。
「もっともっと、気持ちよくしてあげたいけどさ、俺様ももう、けっこう滾っちゃってるから」
「え……あっ」
 サッと取り出された佐助の陰茎を目にして、幸村は息を呑んだ。隆々と天を向いている佐助の肉欲から、視線が離れない。
「そんなに見つめて……欲しいわけ?」
「そ、んな、ことは」
「遠慮しないでいいって。旦那、これで奥をかき回されるの、大好きだろ?」
「んなっ!」
 火を噴くほどに赤くなった幸村が、否定の言葉を口にするより先に、唇に佐助の人差し指が当てられた。
「俺様は、大好きだぜ? 旦那の中に入って、暴れまわるのが、さ」
「ぐ、ぅう」
「ははっ。すごい顔」
 劣情と羞恥をない交ぜにした幸村の顔に接吻をして、佐助は幸村の腰を抱いた。分身が幸村の背を支えて、脚を持ち上げる。大きく開いた幸村の脚の間に、佐助の陰茎が添えられた。
「旦那。俺様にしっかり掴まってろよ」
 幸村は言う通りにした。うれしげに目を細めた佐助は、分身を消して幸村を支える腕を緩めた。重力で落ちた幸村の体に、佐助が突き立てられる。
「がっ、ぁふ、ぅ……んぅうっ」
「く、は……狭い、けど、すごく熱いね、旦那」
「は、ぁ、佐助ぇ」
「動くよ」
「ああっ」
 不安定な格好で突き上げられて、幸村は手足の両方で佐助にすがった。緊張した肉壁が佐助の陰茎に絡みつく。佐助はそれをあやすように腰を動かした。
「んはっ、ぁ、ああっ、さ、佐助、あっ、あ」
「いいよ、旦那……とけそうなくらい、熱くてたまんない」
「ぁううっ、んっ、んふ、ぁ、ああっ、は、あ……ああっ」
 ゆさゆさと上下に揺すられる幸村の背で、ハチマキと髪の尾が揺れている。体を丸めて必死にしがみついてくる幸村の姿に、佐助の胸が甘く絞られた。
「ああ、ダメだ……こんなんじゃ、ぜんっぜん足りない」
「えっ、あ」
 床に転がされたかと思うと、ガツガツと乱暴に突き上げられて、幸村は目を白黒させた。奥の扉をこじ開けては離れる佐助の切っ先から、先走りがにじんでいる。それに濡らされた奥が歓喜に湧いて、もっともっととねだるようにうねった。
「ぁはぁううっ、さすっ、あっ、ひぃいっ、あっ、あ、くぅうんっ」
「ああ、旦那、イイ声……もっと、グチャグチャにしたくなる」
「んぁっ、ぁ、はぁうううっ、さすぅ……っ、佐助ぇえ」
「そんなに煽られると、ガマンできなくなるって」
「ひ、くぅあああんっ」
 ゴリッと奥をこじ開けられて、熱の奔流を注がれる。喉を大きく開いて、官能の雄たけびを上げた幸村は、腰を突き上げて精をほとばしらせた。
「ふっ、まだまだぁ」
「ぁひっ、んぁあっ、ぁひぅううっ」
 絶頂の余韻も冷めやらぬまま、クルリと反転させられて、今度は背後から突き上げられる。円を描くように動く腰つきに、えぐられながら突き上げられる媚肉と化した内壁が、愉悦に湧いてうごめいた。
「ぁふっ、く、ぅうんっ、あっ、あはぁあ」
「獣みたいだね、旦那。俺様達ふたりとも、さ」
「ひっ、ひぅ、あっ、は、はんっ、は、はぁうううっ」
 汗を滴らせ、佐助は獣欲の赴くままに幸村を翻弄し、精を注いで恍惚の極みへと連れて行った。
 * * *
 コトを終えて、修練の時は涼しい顔をしていたくせに、いまは汗みずくになっている佐助を横目で見ながら、幸村はムッツリしていた。
「そんな顔しないでよ、旦那。俺様と旦那が本気でやりあったら、道場が吹っ飛ぶんだって。それに、これだって本気のぶつかり合いだろう? なんのごまかしもない、無防備で全力の、さ」
 手拭いで幸村の体を拭きながら、佐助は器用に片目を閉じた。幸村はムスッとしたまま、問う目を佐助に向けている。
「言いたいことがあるんなら、遠慮せずに言いなよ、旦那」
「う、む」
 幸村の視線が外れた。それでもチラチラと佐助の様子をうかがう幸村の唇が、だんだん尖っていく。
「なぁにぃ? 旦那」
 甘い声を出した佐助に、幸村はおそるおそる疑問を口にした。
「動きを封じるのは、こういう方法もあると言ったな」
「ん? うん、まあ……言ったねぇ。正攻法だと旦那には、かなわないからさぁ」
「そのようなことはない。佐助は……ああ、いや、そうではなく」
「ん?」
「に、任務で、このようなことを……して、おるのか?」
 ジトッとした目の幸村に、佐助はキョトンとしてから吹き出した。
「嫉妬してんの?」
「なっ、嫉妬など」
「してくれてるんだったら、俺様、大感激なんだけど?」
「女々しいと笑うのではないのか」
「笑うわけないだろ」
 佐助の指先が幸村の頬に触れる。つつかれて、幸村はどんな顔をしていいのか、わからなくなった。
「ねえ、旦那」
 真剣な気配を宿した佐助の瞳に、幸村の心臓がドキリと跳ねる。顔がゆっくり近づいて、耳元に息が触れた。
「俺様がシたくなるのは、旦那だけだぜ?」
 カッと赤くなった幸村に、佐助がクスクスと喉を震わせる。
「旦那は? どうなのさ」
 小首をかしげて見下ろしてくる佐助を、幸村は腹に力を込めて羞恥を抑え、まっすぐに見返した。
「俺もだ、佐助。このようなこと、おまえのほかにさせるわけがない」
「光栄だね」
 声を弾ませた佐助の目じりに照れが浮かぶ。あっ、と思った幸村の唇が、やわらかく押しつぶされた。
(照れる佐助など、珍しい)
 ふさがれた唇の奥でつぶやいた幸村の心が、ふわりとあたたかく宙を舞った。

2018/02/25



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