障子を開けた己の忍、猿飛佐助が身震いするのを真田幸村は見逃さなかった。「佐助」 寝具に身を包まれたまま声をかければ、茜色の髪が揺れておだやかな笑みが幸村に向けられる。「なぁに、旦那」 にっこりと振り向いた白い肌は、月光にしらじらと輝いていた。見るからに寒そうな顔色に、幸村は眉間にシワを寄せた。「来い」「なにさ。もしかして、ひとりで寝られないから、添い寝してほしいとか言う?」 からかいめいた言葉を受けて、なるほどと幸村は愁眉を開いた。障子を閉めて近づいてきた佐助が、あれっと首をかしげる。「子ども扱いするな、とか、怒ったりしないわけ?」「おまえは、俺に怒られたいのか?」「そういうわけじゃないけどさ」 調子狂うなぁとボヤきながら、こめかみを掻く佐助の手を握った幸村は、唇を尖らせた。「冷たいな」「旦那の体温が高いだけだよ。子どもみたいに、あったかいんだから」 そうかとうなずいた幸村の鳶色の瞳が輝いて、佐助は「あ、何か思いついたな」と脳裏で言った。「どうしたのさ、旦那」「共に寝るぞ」「は?」「ほら、佐助」「うわっ」 いくら身軽で素早い忍であっても、気を緩めているところを、戦場では若虎とも紅蓮の鬼とも称される勇猛な青年に力いっぱい組み伏せられれば、あらがいきれるものではない。あっけなく夜具の上に押し倒されて、目をパチクリさせる佐助の上に綿入れをかぶせた幸村は、満足そうな顔をして横になった。「これで良い」「なにが、これで良いのさ。本当に、ひとり寝が寂しいとか、言っちゃうわけ?」 あきれ顔の佐助の頬に、幸村は手を乗せた。「俺があたたかいのなら、こうして寝れば良いだろう」「あ、えぇと……もしかして旦那、俺様の湯たんぽになるつもり?」「湯たんぽよりも、長持ちをするぞ。なにせ、俺の体は冷めぬからな」 たしかに、湯たんぽは湯が冷めれば温度が下がっていく。だが、生きている幸村の体温は多少の上下はあれ、完全に冷めてしまうことはない。 生きている、という単語を浮かべた佐助は、ゾッとした。年よりも幼く見せる無垢な笑みを浮かべる青年は、武将なのだ。戦に身を投じ、槍を奮って戦塵にまみれるその体に、切っ先がめりこむ日が来ないとも限らない。「佐助?」 唇を引き結んだ佐助のこわばった表情に、幸村は目をまたたかせた。「あ……ううん、なんでもない」 笑ってごまかす佐助だが、内心は冷たくなっていた。忍である自分の身を案じる幸村は、自分自身の命の重さを認識していないのではと疑いたくなることが多々ある。常にそばにいて守れるわけではない。いつ、彼が倒れるともわからない。もちろん、そう簡単に刃にかかる幸村ではないが、だからこそ危険に近づく率が高いとも言える。「また、忍がどうのと言うつもりか」 佐助の硬い顔つきを、小言の前だと判じた幸村は鼻を鳴らした。「風邪に気をつけろと、口うるさく言うておるだろう。こうしておれば、火鉢の炭が消えたとしても、ぬくくて良いではないか」 立春を迎えたとはいえ、まだまだ冷える。寒さのゆるんだ後に戻って来る冷えは、病を運んできやすい。だから用心しろと、佐助は常々言っている。それを理由にした幸村に、そうだねと佐助はつぶやいた。「ならば、良いな」「うん……ねえ、旦那。俺様、もっと芯からあったまりたいんだけど、いいかな」 佐助の声が妙に凪いでいることよりも、頼まれたことに気を取られて、幸村は頬を持ち上げた。「かまわぬぞ」「ありがと。それじゃ、遠慮なく」 佐助の語尾が幸村の唇に触れる。目を丸くした幸村のポカンと開いた口内に、佐助の舌が侵入した。「んっ、う……うぅっ? ん、ふぅ」 しっかりと肩を押さえつけられ、のしかかられた幸村は目を白黒させた。口内を舌でまさぐられて、肌が熱くなってくる。佐助の指が着物の合わせ目にかかり、胸筋をまさぐられて、やっと事態を理解した幸村は真っ赤になった。「んっ、んぅうっ、う……ふぅっ、う、んぅうっ、う」 細く長い指に胸筋の谷をくすぐられ、ポチリと浮かんだ突起を絡めとられた幸村の喉が、ヒクリと動いた。佐助の指は巧みに動き、幸村の胸乳の先を硬く凝らせる。「んふっ、う……ぅう、んっ、ん……ふ、んぅうっ、う」 鼻から漏れる幸村の息が、荒く、甘くなっていく。敷布を蹴る幸村の脚の間に体を滑りこませた佐助は、腹を彼の腰に押しつけた。「んっ、ぅう……う、ふ、ううっ」 深い口吸いと胸への刺激で、血が集まりはじめていた幸村の下肢は、佐助の腹に擦られて大きく育った。下帯の中が窮屈になるほど大きくなった箇所が、ヒクヒクと疼いている。羞恥を覚えて目じりを赤くした幸村から顔を離して、佐助はフッとほほえんだ。「熱くなってきたね、旦那」 艶やかな微笑に、幸村の背骨にゾクリと甘美な悪寒が走った。「さ、すけ」「もっともっと熱くなって、俺様をあたためてよ」 ささやく佐助の唇が、幸村の耳裏に触れる。耳朶を甘く噛まれて、幸村はブルリと震えた。佐助の腹でグリグリと刺激される下肢が脈打ち、じっとしていられなくなる。「なぁに、旦那。そんなに腰を動かして。いやらしいなぁ」 クスクスと笑う佐助の息が耳朶に注がれ、幸村は羞恥に瞳を揺らした。「ち、違う……俺は別に」「別にって何さ? こんなに硬くしておいて、違うとか言わないよね」 強く体を押しつけられて、下肢を潰された幸村はうめいた。楽しげな佐助の唇が、幸村の首筋を滑り胸へと移動し、乳嘴にたわむれかかる。「んっ、は……ぁ、佐助……っ、俺は、このようなつもりでは……っ、あ」 知っているよと心の中で呟いて、佐助は愛撫を続けた。乳首を舌先で転がせば、幸村の体温はどんどん上がっていく。胸を喘がせる肌は桃色に染まり、劣情の置き場を探す腰が揺れている。「ん、は……佐助、ぁ、あ」「気持ちいい? 旦那」「うっ、ん……む」「やだなぁ、旦那。恥ずかしがらなくてもいいだろ? もう何度も、肌を重ねているんだから」 意地悪く言われて、幸村はギュッと目を閉じた。全身を硬くして渦巻く快楽に堪えようとするが、佐助の指が下帯の中にもぐりこめば、あっけなく強張りがほどけてしまった。「あっ、は、んぁ……佐助、ぁ」 下帯から取り出された陰茎を、佐助の指が優しく撫でる。もどかしい刺激に、幸村の腰が無意識に浮いた。「もっと扱いてほしい?」 甘い問いに、幸村はどうにも答えられなかった。下唇を噛めば、しかたないなぁと唇を舐められる。「普段はバカ正直なくらい素直なくせに」 ギュッと根元を握られて、幸村は口を開いた。「あっ」「気持ちいいだろ?」 片手で根元を、もう片手で先端をくすぐられて、湧き上がる快感に幸村の目に涙が滲む。それをぬぐった佐助の舌が、頬を伝って幸村の唇に移動した。「んっ、う……ふ、ううっ、ん」 ふたたび差し込まれた舌に、幸村は舌をからめた。頭の芯が快楽にぼやけている。もっと刺激が欲しくてたまらない。「んっ、う……ふ……ぅ、ううっ、ん」「ふふ、旦那……かわいい」 身を起こした佐助に足を持ち上げられて、幸村は息をついた。体中がうずいている。「ほら、旦那……旦那の魔羅、こんなに大きくなってるよ」 高々と腰を持ち上げられて、視界に自分の下肢を取られた幸村はゴクリと喉を鳴らした。自分の顔に鈴口が向いている。その先からは、透明な液体がにじみ出ていた。「こうなった旦那って、すごく熱いんだよね……俺様、溶けちゃうんじゃないかってくらい」 うっとりとした佐助の声を聞きながら、幸村は彼の薄い唇が蜜嚢を含むのをながめた。チュクチュクと吸われて、陰茎の先を擦られる。「んぁ、は……っ、ぁ、佐助……は、ぁ」 佐助の視線で視界を固定された幸村は、己の陰茎がビクビクと震えながら蜜をこぼす様子を見ざるをえなかった。垂れた液が佐助の指を濡らし、テラテラと光らせている。クビレをくすぐり、幹をなぞって先端に戻った指先が、鈴口を擦って蜜を塗り広げる。「んぁ、あ……はぁ、あっ、佐助……ぁ、あんっ、ん、ぁ」 甘い声を上げて、幸村は腕を伸ばした。佐助の髪を掴んで、息を弾ませる。「色っぽいよ、旦那……すごく、いやらしい顔してる……そんな旦那を見ていると、俺様、すっごく熱くなっちゃうんだよね」 佐助の腕が離れて、幸村の腰は夜具の上に戻った。手早く服を脱ぎ棄てた佐助が、己の下肢を幸村に示す。怒張したものを目にした幸村の尻が、ヒクリと反応した。「物欲しそうな顔になってるよ、旦那。まあ、欲しいのは俺様もなんだけど、さ」 竹筒を取り出した佐助の手が、次に何をするのかを幸村は知っている。無意識に腰を浮かせた幸村に、佐助は艶然とほほえんだ。「欲しがってくれて、うれしいよ。旦那」 かすれた声に、幸村の胸は疼いた。ふたたび足を持ち上げられて、膝を肩に押しつけられる。脚を抱えておいてほしいとの無言の要求に、幸村は従った。浮いた尻の谷を佐助の指が撫でる。「ふぁっ」 ちいさく声を上げた幸村は、指先が秘孔の口に軽く沈むと目を閉じた。佐助の指を伝って、竹筒の中の液体が秘孔の奥へと注がれる。指先が液体を内側に塗り広げ、ひくつく狭い肉をやわらかくほぐしていく。「ふは、ぁ……あ、はぁ、あ、ん……ん、ぁあ」 断続的な嬌声を上げる幸村の内側に、佐助の指が根元まで押し込まれた。たっぷりと液体を含まされた内壁をあやされて、幸村は胸を高鳴らせる。「は、ぁうう……んっ、ぁ、ああ」「その声だけで、とろけそう……はぁ、旦那……この中で、たっぷり俺様をあたためてくれるよね?」「ひぅっ、ぁ、あ……佐助、ぁ、んっ、ぅうっ」 内側をほぐされる幸村は、問いかけに答える余裕を持っていなかった。たっぷりと注がれた液体をかき回されて、グチグチと淫猥な音をこぼす箇所が物足りないと訴えている。めくるめく官能を知っている肉体は、極まりの快感を求めていた。「ぁ、はぁ……あっ、佐助ぇ」「ん、俺様もガマンの限界」 切ない幸村の声に、佐助が答えた。秘孔に佐助の欲の切っ先をあてがわれて、幸村はホッと息を吐いた。「そんなに俺様が欲しいんだ? ふふ……ありがとね、旦那」「ぅあっ! あ、はぁあああ!!」 蠕動する肉壁をえぐられながら拓かれて、幸村は目を見開いて仰け反った。頭の奥で火花が散って、腰のあたりに溜まっていた劣情がはじけ飛ぶ。「くっ、う……あ、すご……食いちぎられそう」 うめく佐助が激しく腰を動かして、幸村は射精の快感を引き延ばされた。「んはぁああっ、あ、はぁうううっ、くぁ、あぅ、あ、はぁあううっ、ん、ぁああっ」 舌をのぞかせて淫らに声を上げる幸村を見下ろす佐助の表情は、恍惚としていた。乱れた意識でそれを捉えた幸村の興奮はさらに高まり、悦楽にのたうちながら、突き立てられた佐助を締めつける。「は、すご……熱い、旦那」 汗をにじませる切羽詰まった佐助の声に、幸村は射精の名残をポタポタとこぼしながらほほえんだ。夢中になって求めてくる忍が愛しく、こんな姿を見せるのは自分以外にいないと確信をして、充足に包まれる。「っ、旦那……その顔、反則……っ」 グッと息をつめた佐助の欲が大きく脈打ち、幸村の奥へと劣情を吹きかける。「ふぁ、は、あぁうっ、んく、ぅう」 佐助のすべてを媚肉で搾り取りながら、幸村は二度目の絶頂を迎えた。「は、ぁ……あ」 視界を快楽に混濁させて余韻に震える幸村の唇に、そっと佐助の唇が重ねられる。「はぁ、すっごく熱い……あったまるどころか、熱くてたまんない。ねぇ、旦那……もっともっと、とろけさせてよ、俺様のこと」 トロリと甘い懇願に、幸村はかすかに顎を動かして了承を伝えた。 2019/02/04